「ゾウの時間 ネズミの時間」という本をご存知ですか?
一昔前に話題になった本のようで、「第9回(1993年) 講談社科学出版賞」を受賞しています。
Amazonの評価も比較的高いので読んでみました。初版が発行されたのが、1992年なので25年近くも昔の本になりますが、今読んでも目から鱗の知識が満載でした。
本書のテーマをひと言でいうと、様々な動物をその「サイズ」に着目して動物のデザインを発見し、人類の将来へのヒントにする、となります。
私が生物学を学んだのは高校生の授業くらいで、それ以降はほとんど勉強したことがありません。それでも、娘が生まれてからでしょうか、生命の神秘というか、人や動物の成長過程に興味を持つようになりました。なぜなら、生まれてからずっと娘の成長を見ていると、驚きの連続だったからです。
動物のサイズには意味がある
本書で知り得た知識を一部紹介すると、
- 哺乳類の時間は、体重の1/4乗に比例する
つまり、大きな動物ほど、何をするにも時間がかかるということで、この1/4乗則は時間の関わるあらゆる現象に広く当てはまるそうなんです。
またこの法則を使うと、
- 哺乳類はサイズによらずすべて、一生の間に心臓は20億回打つ
ということもできるそうです。これはすなわち、物理的な時間ではなく心臓の拍動を時計として考えると、100年近い寿命をもつゾウも、数年しか生きることができないネズミも、同じ長さだけ生きて死ぬと考えられるのです。一生を生きた感覚は同じかもしれないと想像してみると不思議ですよね。
次に「島の規則」という法則も面白い。これは、
- 動物を島に隔離すると、サイズの大きい動物は小さくなり、サイズの小さな動物は大きくなる
というもの。
これは、動物には本来ある一定の適正範囲(無理のないサイズ)があるのだけれども、例えば、捕食者という制約によって、生きるためにサイズを変化させているのではないかと考えられるそうです。
動物それぞれのサイズには意味があるというのは納得です。その昔、地球上にいた恐竜たちはどれもバカでかいサイズでしたが、当時の生活環境が、恐竜たちを巨大化させていたのかもしれませんね。
生き物は合理的にできている
次に、なぜ車輪を持つ動物がいないのかという話も興味深かったです。
厳密にはバクテリアの中には車輪を持つものがいるそうですが、肉眼で見る動物には車輪を持つものがいないですよね。
エネルギー効率から考えると、歩くよりも車輪の方が効率がよくて楽にもかかわらず、進化の過程で車輪をもつ動物は生まれなかった。本書によれば、ヒトというサイズから見れば、自然界は平らに見えるかもしれないけれど、ネズミなどの小動物にとってみると自然界は凹凸が多い世界なんです。その凹凸の高さが車輪で移動する場合に障害になるというのが、車輪動物が生まれなかった理由なのではないかというのです。なるほどなぁと思いました。
他にも様々な例を挙げ、動物がいかに合理的にデザインされているかを本書では学ぶことができます。
ヒトは本来どうあるべきか
そして最後に筆者は問いかけます。
はたしてヒトは、本来の時間で生きているのだろうかと。
たまに田舎の実家に帰ると、時間の流れがゆっくりしている感覚になります。都会に住む私たちは、都会という環境的制約によって、思考や行動に影響を受けているのではないでしょうか?
都会人のやっていることは、はたしてヒト本来のサイズに見合ったものだろうか?
ヒトがこれから目指すべき生き方、働き方のヒントは意外と身近な動物から得られるのかもしれませんね。
皆さんはどう考えますか?